もちろんそれまでも安全性には十分に注意して衛生管理を徹底してきましたが「生食用」となれば法的にもより厳格な基準が設けられているため、あらためて設備・管理面を見直し、整備する必要がありました。中でも水質は重要なポイント。当初は既存の井戸で実験を繰り返し、約20年の試行錯誤を経て、最終的に地下19~21メートルの岩盤層を通過した40メートルの井戸2本と80メートルの井戸1本、計3本の井戸を掘り、ポンプアップすることに。この地下海水は塩分濃度2.9~3.4パーセントで、生活排水は全く入りません。さらに紫外線を照射して殺菌し、ほぼ無菌の地下海水を豊富に得られるようになり、浄化レベルを表す検査数値も安定するようになりました。生産者が有する設備としてはおそらく最高のレベルではないかと自負しています。
このようにしてくみ上げた地下海水で満たした殻付き牡蠣専用プールに、殻を洗浄した牡蠣を入れ、身の中までしっかり浄化します。牡蠣の体内を清浄な地下海水が通ることで浄化が進み、法律上は24時間浄化すれば生食用として出荷できるのですが、長船では48時間、徹底的に浄化。安心して食べていただくために、もうひと手間を惜しみません。
しっかりと浄化することで、食味の面で苦手とされがちな生臭さやえぐみなどが抑えられ、牡蠣本来の純粋なうま味が引き立ちます。長船の殻付き牡蠣は水揚げ後、太田川河口の栄養豊富な漁場に1カ月~2カ月ほど移動し、身入りを良くする(中身を太らせる)という過程があります。グリコーゲンなどの栄養素やうま味成分をたっぷり蓄えて戻ってくるのです。
生食用の販売開始前には、広島県環境保険協会で水質検査、広島県西部保健所で生食用牡蠣の検査を実施し確認証明書を発行して頂いています。
出荷期間中はほぼ毎日(11月~5月末頃まで)、登録衛生検査所 広島微生物センターにて成分検査を実施し、その検査結果をウェブサイトで公開しています。牡蠣使用水と生牡蠣、いずれの項目も基準値をクリアし、中でもE.coli(大腸菌数)、一般細菌数においては優れた結果を出しています。
食べ頃に成長した牡蠣を海から引き上げ作業場に持ち帰ります。この時点でサイズや形などを基に「殻付き」で出荷するものを取り出します。現在は全水揚げ量の3~5パーセントを殻付きとして出荷しています(残りは加熱用むき身で出荷されるため別工程へ)。
長い間海で暮らしていた牡蠣の殻には泥や海洋生物が付着しているため、専用のクリーナーで丁寧に削り落としきれいに洗い流します。
身がしっかり詰まった牡蠣をお届けするために、再び海へ。約1カ月の間「身入り漁場」と呼ぶ栄養たっぷりの海域で、殻は丈夫に、身は大きく育て、立派な殻付き牡蠣に仕上げます。
再び作業場に持ち帰り、高圧洗浄機を使って泥や海洋生物をくまなく落とします。
殻付き牡蠣専用プールに入れます。地下19~21メートルの岩盤を掘り抜き、地下40メートルと80メートルからポンプアップした地下海水を使用。塩分濃度3パーセント、水温は冬場で16℃、夏場でも16.5℃のほぼ無菌状態のミネラルたっぷりの地下海水をさらに紫外線に通して殺菌し、かけ流ししています。牡蠣がこの水を飲んで排泄を繰り返すことで、牡蠣の体内が浄化されます。生食用として出荷される殻付き牡蠣がこのプールで過ごす時間は約48時間。24時間でも生食用として食品衛生上の基準はクリアでき、加熱用の場合浄化は法的には不要とされていますが、長船では独自の社内規程を厳格に定め、加熱用でも24時間、生食用の場合は48時間、殻付き牡蠣をしっかり浄化しています。
最後にもう一度洗浄して殻をきれいに。殻が汚れていても味には影響がないとはいえ、調理して殻を開けるまでの間もできるだけきれいな状態で気持ち良く食べてほしい。そんな思いから何度も洗浄して見た目の清潔感にもこだわっています。お客さまから「長船の殻付き牡蠣は見た目もきれい」という声をいただき、とてもうれしく思っています。
いよいよ、皆さまのもとへ。生食用の「むき身」をご希望の場合は、ご注文時にお知らせいただければ準備します。
長船養殖場では、全国の飲食店様へ卸販売サービスを行っております。新鮮な生牡蠣の販売、またはお料理の提供をされる飲食店様、法人様はお気軽にご相談ください。
長船は通販以外にも直売所でも新鮮な牡蠣を販売中!
プリプリの生食用牡蠣はもちろん、カキフライやオイル漬けなどたくさんの商品をご用意しています。
牡蠣打ち場を
気軽に見学できます!
(当養殖場の隣に駐車場があります)
営業時間:9時~17時
(月~土・祝 ※日曜定休)
結婚してここに来るまでは牡蠣が一番苦手な食べものだったんですよ。でも食べるうちに慣れてきて、今ではいくつでも食べられます(笑)。おいしいし、栄養価も高いし、硬いものが食べられなくなっても牡蠣は食べられると買ってくださる年配の方も。生牡蠣以外に加工品も販売していて、牡蠣フライが好評です。衣が付いているのでご自宅では揚げるだけ。衣はうっすらまぶしているので牡蠣の存在感をしっかりと味わえます。冷蔵なので鮮度も高くてジューシーです。牡蠣といってもどのように調理すればいいのか分からないという方も多いと思うので、いろいろな食べ方を提案して、牡蠣を食べ慣れていないという方にももっと親しんでもらいたいですね。電子レンジで簡単に調理できる方法もありますし、意外と手軽なんですよ。特に長船では生食用に力を入れているので、生で食べる魅力を多くの人に広めていきたいと思います。
前職で長船の営業担当だった縁で、退職後にアルバイトとして働くようになり、その時に社長から「本気で一緒にやらないか」と声をかけていただいて「お願いします」と。体を動かすのが好きなので養殖現場での作業も苦になりませんでしたね。徐々に販売やウェブサイトに関わる業務を任されるようになり、今に至ります。広島県内外のさまざまな地域の飲食店さんや販売店さんなどとお付き合いさせていただいており、広島県内のお客さまは配達でお伺いすることもありますし、広島県外のお客さまのもとにも年に一度は訪問して、直接お声を聞いています。長船を選んでいただいて、ずっとうちの牡蠣を使い続けてくださっていることが信頼の証だと、とても有り難く思っています。これからもずっと、より良い牡蠣を迅速にお届けし、喜んでいただけるよう、安心しておつきあいを続けていただけるように努めなければと励みになりますね。
私は子どものころから祖父と祖母にかわいがってもらい、長年二人が働く姿も見てきたので、祖父が創業したこの会社で恩返しをしたいという思いがずっとありました。働き始めた当初は肉体労働の大変さを痛感し、あらためて祖父や現場の人たちのすごさを思い知りましたね。年々作業の流れが分かってくるにつれ、自分なりにペースを整えることができるようになりました。微力ながら牡蠣養殖の一端を担っているので、水揚げした牡蠣の身入りが良いとホッとします。牡蠣は1粒1粒個性があって、殻が大きくても身が小さいものもあれば、殻が小さくても身がぱんぱんに詰まっているものもあり、殻を開けてみないと分かりません。できるだけ自分の目で出来栄えを確認し、それを次に生かすよう努めています。長船の牡蠣は徹底的に浄化するため生臭さがなく、純粋に牡蠣の味を楽しむことができます。ぜひこの魅力を味わってください!